友人さん曰く その2

昨日の続きです。

エレベーター前で一緒になった件の女史、ここではAさんとしておきましょう。

「あのマジックはどこで覚えられたのですか?」

 そして

「どちらで流行っているのですか?」

とお聞きしたところ、某マジシャンの講習会で習い、すごく気に入って、しょっちゅう友人や仕事先の相手などに演じているのだとか。

要するに周りで流行っているという表現は正確ではなく、あくまでもマイブームであるという程度の意味合いであったようです。(^^;)

まあ、なんにしましても、その点に関しては、考案者としては素直に嬉しいわけです。

で、

「実は私の考えたトリックなんですよ…」

とお話しすると、そんなことがあるとは想像もしていなかったのでしょう。

目を丸くして驚いてらっしゃいました。

私の顔を知らないのは当然として、ゆうきともというマジシャンが考案したトリックであること自体を知らなかったようです。

すでにリリースされている作品ですから、直接ビデオや本で覚えたものを使うのは自由ですし、それをうまく日常で活用してくれていること自体も嬉しいことです。

でもAさんの場合はそうではありません。

無論、昔から、そして現在のネット社会においては、現実的にはそうではない人の方が圧倒的に多いのが現状。

また仮に正規の方法で覚えたマジックだとしても、本来は講習会の教材として活用したり、テレビなどの大きなメディアで使用する場合は、ある程度考案者に対して筋を通しておくことが望ましい…

…のではありますが、今回の場合、Aさんにマジックを教えた方が私に許可をもらっていたのかというと、その点はNO。

しかしながら、この点に関して突き詰めてしまうと、おそらくほとんどの講習家やマジシャンがアウトになってしまうのが現状です。

決して良いことだとは思いませんが、これはある程度仕方のないことだとも思うのです。

ただしその場合は、せめてきちんと考案者や出典などをクレジットした上で、なるべく正しいやり方を講習する責任があります。

そもそも大抵のマジックは先人たちの知恵によって成り立っている訳で、考案者が分からない場合でも、ましてや考案者があきらかである場合は特に、その人物に敬意を払うべきですし、その人物に感謝しましょうねってなことを教育してあげなくてはいけません。

これは日本が世界に誇る偉大なる先人の一人、石田天海さんだってそうおっしゃってますし…

今回のメインゲストであるユージン・バーガーさんも、レクチャーの時間中、かなりの時間をさいてその部分を強調しておられました。

曰く

「すばらしいプロットやアイデアは、先人たちから私たちへのギフトなのです。だからこそ私たちはその人物の名前をきちんと知るべきです」

と。

今回Aさんにこのトリックを教えたというマジシャン、実は私とは知り合いですから、おそらくクレジットくらいはしているはずです。

つまり実際のところ、仮に教えるときにきちんとクレジットしていたとしても、大抵の場合においては、教わる方はそんなことまで覚えてはいないでしょうし、今回もおそらくはそういったことなのだと思います。

こういった話は響かない人には一生響きませんから、教える側もついつい無駄なことなのかな… と思えることもあるでしょう。でも、教える立場の人間は、何度でも繰り返しそれを徹底する必要があるのですね。

そして、本当にそのトリックが気に入り、演じ、恩恵を受けたのであれば、その時にもう一度きちんと歴史や背景をできうる範囲で調べて敬意を表すれば良いだけ。

聞くとAさんは、本当にマジックは始めたばかりの、いわゆる初心者とでもいうべき方でありまして、このトリックを教えたマジシャンも、まさか箱根のような濃い会にAさんが参加し、しかも本人の前でその作品を演じることになるとは読めなかったことでしょう。

でも先に述べた感謝の気持ちさえしっかりとご本人が持っていれば、(教える側もしっかりと責任をもって教育していれば)どんな場合でも最善の策が取れるはずですよね。

聞けばAさんは本当にこのトリックが大好きで、もう百回は演じているのだといいます。

発表者にとってこれはとても嬉しい。

“だからこそ” この機会に、ユージンさんの気持ちもうまく伝わってくれていたら、もっともっと嬉しいな~と思ったのでありました。

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