ゴッシュマンのフェイクパス

を知らない方は今のうちに見ておきましょう。

ビデオやDVD、最近はネットの動画でも見られるんでしょうね、きっと。

で、その間にちょっと別のお話を。(こーゆー話題とゆーのは、実をゆーとしょっちゅーあったりする訳ですが、タイミングを逃して忘れてしまうことがおーいので、いちおー記録しておきます。興味のない方にとってはどーでもいー話です)

昨日の忘年会で、ある日本製レクチャービデオを鑑賞していたのですが、その中におそらく ケン・クレンゼルの 「It Can’t Be」 (mML25号では 「ありえない一致」 として解説) を元にしたと思われるトリックの解説があり、まあいろんな意味で会場が ヾ(・・;) といった感じになったわけです。

おそらく…… というのは、自信満々で解説しているわりには、当人が読んだと思われる本に関する情報があやふやで、推測が難しいからなのですが、たまたま解説者に関する情報が (こちら側に) あったので、まあ元ネタに関しては間違いはないでしょう。

現代の奇術家の間で 「エニカード・アット・エニナンバー」(以下エニエニ) というと、結構制約が厳しくなり、また、技術的にも、演出的にもバランスの難しいテーマなのですが、「ありえない一致」 に関していうならば、演者側にとっては最小限の負担で行うことができ、一般客にとっても十分に不思議な優れた作品です。

※ちなみに 「エニエニ」 の歴史に関するすばらしい研究が石田信隆氏によって発表されており、「フレンチドロップ」 のサイトで読むことができます。かなり広義のテーマとして扱っており、大変参考になります。 ただ、あそこまで作品のテーマを広げるのであれば、最後の一覧表にはマックス・メイビンの3組のデックを使う作品や、マーク・リベリッジの商品、庄司タカヒトのスパークルアイ・デックが入っていてもいいかなと。

ついでにいうと現象的には 「エニエニ」 ではないものの、RRMCの中川氏による 「キャメル(楽だ)デック」 は、古くからあるピークデックとレギュラーデックを絶妙に組み合わせた傑作です。商品化されていたと思いますが、ご存知でない方は買って損はないでしょう。

石田氏によると、クレンゼルの作品は58年に単一で商品化されたもののようですが、基本的な構造 (2つのデックの一方を観客に持たせ、好きな数をいわせたあと他方のデックから一枚選ばせる。持たせておいたデックより選んだ枚数のカードを配ると、選んだカードと一致する) は33年にアル・ベーカーによって発表されているようです。

日本では 「奇術研究28号 1962年冬号」 に高木重朗氏(どーでもいいことですが、最近はもう高木さんを知らない愛好家?が多いのね (-_-;) なかには 「たかぎしげろーさんでしょ!それくらい知ってますよ」 ^_^; なーんて人も。 シゲオさんです! 念のため) が 「あり得ない一致」 と題して紹介しており、そこでは61年の暮れにニューヨークの知人が 「最近NYで流行している奇術」 といって送ってくれたものと書かれています。

このあとしばらくして、75、6年くらいに (手元に資料なし、すみません) 日本文芸社から 「カード奇術入門」(東京堂出版の「カードマジック」の底本) が出版されており、そこに再録されておりますので、ビデオの解説者のいっている本とは、多分コイツのことだろうなと。

ビデオで解説されているモノは、一方のデックを配ってもらい、好きなところで止めてもらう。もう一方のデックは演者が配り、観客にストップをかけてもらう。2枚のカードが一致する。 ……という、まったくもって 「エニエニ」 とはかけ離れたモノになっており、正直なところ改案にすらなってはいないので困ってしまうのですが、まあ、その部分についてはこれ以上語るつもりはありません。

興味深かったのは、ビデオを見ていた奇術家の一人が、後半で使用されている 「ヘンリー・クライストのフォース」 に関して、「あのカードのめくり方はどうにも気持ち悪いですよね」 といった意見を持っていたことです。

※クライストのフォースは、高木重朗氏の 「カードマジック」 112ページに改案が解説されています。

ある意味優秀な方法ではあるのですが、多くの技法がそうであるように、この技法もまた弱点をかかえており (例えばストップのあと、一旦カードをそろえる理由など)、問題のビデオではそういった部分に対する気づかいがある訳でもないので、余計まずくはあるのですが、その奇術家はもっと根本的な部分 ……つまりトップカードをめくったあと、手前 (原案は外側) にジョグして、2枚目以降はそのカードの上にめくって重ねていくという、その動作自体に疑問を持っていたのです。

まあ、要するに本来ならば 「セカンド・ディール」 の代用技法なわけで、完璧なセカンドができればその方が良いでしょうし、そもそも 「あり得ない一致」 では、他のフォース (mMLではバルドゥッチ・フォースを使用) でよかったりするのですが、「クライストのフォース」 自体に関していえば、決して使えない技法ではなく、観客に違和感を与えず、演者自身が納得のいくエクスキューズがあればよいのだと思うのです。

つづく

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