① 手の中に何かを握り締める
② 手を広げると握り締めたものが消えている
マジシャンにとっては基本ともいえる動作ですが、このコンセプトを最初に考え出した人物は天才だと思います。
よく考えてみてほしいのですが、握り締めたものを消す必要 (そう望むこと) が日常の中であるでしょうか? 普通に考えて、そんなこと (テクニック自体ではなく、表向きの行為自体)は想像すらできないのが当たり前なのです。
ここでは以前予告したように、『フェイク・パス(プット)』 それも主としてクロースアップにおける心理について考えてみます。
冒頭で 「消す」 という言葉を使いましたが、実はその前に理解しておかなければならないのは、「受け渡し」 という概念についてです。
一般的な人間が普段何気なく行っていること (動き) は、 「受け渡し」 までなのです。
おそらくピンとこないかもしれませんので補足しますと、何らかの理由から、右手から左手にモノを受け渡すことであれば、これ自体はよくある光景です。
しかし、右手のモノを左手に受け渡して、かつ 「握り締める」 という行為は、マジシャン以外の人間にはほぼありえない行為なのです。
ここを理解しておかないと、次のステップには進めません。
マジシャンにしてみれば、左手を握っておかないとモノがないことが判ってしまうので 「握っておく」 ということになるのですが、そういった理由を正直に説明するわけにはいきませんから、何か正当に感じられる理由がほしいところです。
※次回この部分に関する実例を提示します。是非考えてみてください。
以下にヴァーノンやタマリッツらに代表される、先人たちによってすでに理論化されていることを復習しておきましょう。
あなたは右手のモノを左手に渡して消そうとしているとします。
観客にはあなたの右手ではなく、左手にモノが入っていると信じてほしいわけです。
無論あなたは 「左手に握ったモノが消えてしまいます」 とは言いません。なぜなら余計な警戒をさせることになり、目的を達成することが困難になるからです。
また、多くの場合 「左手に○○を握ります」 といった説明も、同じ理由によりマイナスに働く可能性が高くなるでしょう。
当然ですが、右手のモノを左手に受け渡すためのエクスキューズも必要でしょう。
視線の使い方も、単に右手から左手へと、モノだけを追えばよいものではありませんよね。
ヴァーノンのウォンドとボールの扱いや、タマリッツ・スウィッチを思い出してください。
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