先日「基礎からはじめるコインマジック」“小さな内輪”の出版パーティーに行ってまいりました。
おみやげに小さな“うちわ”(冬なのに!)までいただき、内輪といいながら80名ほどの参加者が集まり、なかなか良い会ではなかったかと思います。
パーティーの間、二川先生をはじめ(わたくし、正直この“先生”という言い方が、あまり好きではないのですが、二川さんに対して“だけ”はごく自然に付けてしまいます)何人かの奇術家の方たちとお話することができたのですが、その中にこんな意見がありました。
「コレって初心者のタメの本じゃあないよねえ、ある程度コインマジックをやってきた人は喜ぶだろうけどサ」
これはものすごく“まっとうな”意見だと思います。おそらくこの本を“一番しっかりと”読まなくてはいけないのはプロであり、普段一般客に演じているアマチュアの方々なのでありましょう。数多くの映像教材では“省略”されている、(もしくは解説者でさえ気づいてはいない)しかし本来ならば“当たり前に”知っておくべき(ホントは理解しておくべき)“大前提”満載のスゴイ本なのであります。
また、そーいった意味では、どう見ても“特定のマニアを対象とした”書籍を中心に出版している(ように思える)出版社が本に付けた「初心者大歓迎!」という帯のフレーズは、“かなり正確”であるといえるでしょう。
たぶんマニアとしては、あまり日本語の文献のない「コインボックス」の手順や、「ポップアップ・ムーブ」等の特殊な技法に目が行くのでありましょうが、この本の本当に素晴しいところは、基本であり、最重要技法ともいえる「パーミング」の、基本的な概念および、実際の習得方法等、それら諸々の、もしかして“世界初じゃないか?”と思えるほどの詳細な解説なのである。
「ザ・マジック」連載当時、「ああ、こんなに分かりやすい解説でコインマジックを学ぶことのできる初心者は、なんて幸せなんだろう」何度そう思ったことか……。
コインマジックに初めてチャレンジしてみようという方、あらためてやり直そうと考えている方は、まず第5章までをしっかりと読み、実践してみてください。
ただし、「やり直しの方々」はともかく「ホントに初心者の方」は、この本の1~5章ぶんが(雑誌連載時には)実際には一年と三ヶ月の期間をかけて書かれているということを理解してください。逆にいうと、それなりに実践できるようになるまでには、当たり前にそのくらいの時間がかかるということです。
また、少し余裕のある方は、第30章「各パーム間の移動」を実践してみましょう。
二川先生自身が 「本来なら、このことはもっと前に書いておくべきでしたが……」 と書いておられますが、実際ものすごく大切なことなのに、実践できていない、もしくは概念自体の存在しない方が多いように見受けられます。
連載時の六年間に加え、そのあと十年の準備期間、名著「コイン奇術入門」が74年に刊行されたことを考えると、今回の本は、約三十年間の集大成といって過言ではないと思います。
現代では、カードマジックにおける「パス」を覚えるのに“ひと月かかりました!”とか、クラシック・パームは“一週間ほどで”といった“自称超天才マジシャン”が、ネット上を跳梁跋扈しているようですが、少なくともこの文章を読んでくださっている皆さんは、そーいった情報に振り回されることなく、これまた何度でも繰り返しますが、じっくりと、ステップ・バイ・ステップでまいりましょう。
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