本当の言い訳?

某図書館の生涯学習企画において、マジックを取り上げるらしいというので覗きにいってまいりました。

経験上いっさいの期待はしないようにしているのですが…… それにしても (-_-;)

チラシには マジシャン:○○氏 としか情報がなく、はじめて見る方であったのですが、プロということ (そしてクロースアップ・マジックの専門家?) を自称するだけで、実際のポジションはよく分かりません。

時間は2時間(!)あったのですが、さすがに1時間でギブアップしてしまいました。

もしかすると、後半はすばらしいモノであったのかもしれませんが、それはもはや私には分かりません。

あきらかにマジシャンのせいではない、段取りの悪さもあって、少し可哀想な気もしましたが、ここではその部分にはふれず、おそらく大抵の奇術愛好家にありがちな(そして当人のはまりがちな) 落とし穴について、あらためて感じましたので、書かせてもらいます。

今回のマジシャンをAさんとしましょう。 Aさんは見たところ30歳くらい (良い意味で落ち着いて見えましたので、もしかするともっと若いのかもしれません )で、パーソナリティーはけして悪くなく、声も通り、好感のもてるタイプです。

ところがマジックの歴史について語りはじめたり、レクチャーとなると、あきらかににわか仕込み、もしくは (裏づけのあまい) 受け売りとなってしまい、本人がいい加減なパフォーマンスをしているだけならまだしも、第三者、それも多くは子供たちに教えるとなると、やはりまずいなあ~と思ってしまいます。

(まるで70年代のいいかげんな子供用書籍を思い出してしまいました。まあ、実際に出典はそこらへんなのかもしれません)

私、よく勘違いされるのですが、「ともの会EX」 などに参加の方はお分かりのように、よほどのことがない限りは (多くの奇術家よりも) にこやかに演技をみていられるはずなのですが、今回は自分でも顔がゆがんでいくのがハッキリと意識できました。バカじゃなければAさんも気づいているはずです。(観客としては申し訳ないな~と思いましたが、これはAさんの責任です)

要はよく知らないことや理解していないこと、裏づけのないことはやっちゃあいけないのです。 本気で勉強するか、謙虚に?ぼかせばいいだけです。

例えば 「ハンカチを貫通するコイン」 を解説するのですが、まずは演技を見せます。 会場は 「ポカ~ン」 です。 なぜか? 現象が明確に伝わっていないからです。 会場には大人と子供が各々10人くらいはいたでしょうか? 段取りも悪いしやり方自体もまちがっており、おそらく八割がた何が起こっているのかを理解していなかったでしょうし、なんとなく貫通に見えた人がいたとしても、そのあやしさに何か引っかかりを感じているはずなのです。

まずいのはAさん自身はその反応を 《不思議で、もしくはタネが分からずにポカンとしている》 そうとらえていることです。

これはものすごい ポジティブ・シンキング なのですが、実は残念ながらよく見る光景です。

演技の前にAさんは言い訳をしてました。

「私はプロなので、演出や雰囲気を大切にしています テクニックならアマチュアのほうがはるかにうまいです お金をもらって仕事をするというのはそういうことなのです」

これは一見正しい主張ですが…… 基本的には演技の前にいうことではないでしょう。 また、技術がうまくないというのも限度があります。

そして実際に行われたのはトライアンフからはじまる、どこかで見たような手順の劣化版です。 いや、いくらなんでもひどすぎました、いや、別に内容がどうとか言う問題以前に、使用する技法自体が下手すぎです。 小学校2年生からマジックをはじめたといっており、「みんなも本を一生懸命読めばすぐにできます」 なんていっているのですが、そりゃあその程度であればできちゃうでしょう。

正直なところ 「おまえがしっかり読め!」 そう思いました。 どう見ても最近のテレビ番組を見て、不完全なモノマネをしているだけなのです。

プロだとさえいわなければ、中途半端に歴史についてかたらなければ、大上段にマジックを教えなければ、もっと謙虚にマジックを趣味で(勝手に)やっているものですとでもいえば、見れないこともないのです。

  結局大切なのは正しい 「前提」 なのです。

「最初はマニアを意識していたのですが、今はそんなことは考えません。一般の方に喜んでもらうのが私の仕事ですから」

「やっていることは簡単なんです、なにが難しいかというと話をしながらマジックを進めたり、お客様のリクエストにうまく答えたりというのが大変なのです」

……どちらも大正解です。 ……が、もっと冷静に自分の演技を見つめることができなければ、100年たっても変わらないでしょうね。

マジックであるがゆえに、タネや、そのやり方がわからなければ、なんとなく通用しているようには見えます。 そして、それゆえに一方的な ポジティブ・シンキング にはまりがちなのです。 

ハンカチとコインをレクチャーしながらAさんは言いました。

「こういった簡単なトリックの裏を知って、感心できる人でないとマジックはできません」 

これもある意味では正解。 しかしこのトリックはけして簡単ではなく、そのことにご本人が気がついていないことが問題なのです。

アクセルとブレーキの場所、そしてハンドルがあれば車の運転はできる! そういいきって、無免許でカーレースに出場するような人物に、交通ルールの説明を受けても信用できないのといっしょです。

マジックであるがゆえに、免許がいらないがゆえに、門外漢の人たちに自分をすごそうに見せかけたり、そこに自身のアイデンティティーを求める人物が多すぎることが、マジシャンの本当の意味でのレベルアップを妨げているのでしょう。

少し毒を吐きすぎましたが、Aさんに関していえば、パーソナリティーが悪くないだけに、本当にもったいないと思いました。

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