コントロール

「だってクロースアップじゃないか」

これは私の記憶に残るフレーズのひとつ。前後に何が入るかによってその意味合いは変わってくるのだけど、
基本的にはポジティブにとらえてくれるはず。

私が強く影響を受けた一冊に『カードマジック入門事典』(東京堂出版 1987)がある。

古今東西の名作アンソロジーであり、高木さんも参加しているので面白くない訳はないのだけれど、もはや麦谷真里氏の長編コラムと言ってもよい、20ページにもわたる『コントロール』の章がとにかく圧巻なのである。

通常カード奇術におけるコントロールとは、特定のカードを演者の都合の良い場所に移動させることを指す。

実際にこの章の中でも某有名トリックをサンプルにして、その巧妙さを解説してくれたりするのだけど… 
いや、無論それも面白いのだけど、この章ではその前の段階として『カード奇術の見せ方・総論』が、詳細なケーススタディやバックアップも含めて8ページにもわたって語られる。

カード奇術の前に『演者自身と観客のコントロール』を教えてくれるのである!

まだ読んでいない方はもちろん、この本を持っていない方も是非とも目を通してほしい。
私は10代のうちに読めて良かったのだと、50を過ぎてからも常々思っています。

冒頭の言葉はカード奇術の巨匠、ハリー・ロレインの言葉。
出典は分からないけど、麦谷氏の書き方から察するに、実際にそういった現場を見かけたのであろうと推測する。

【カードマジック入門事典 17ページより】

ハリー・ローレインは、「もっとそばに来て私の奇術を御覧なさい。もっと、もっと、そばに来なさい。だって、クロース・アップじゃないか」と言いながら、まるで、自分の周囲を取り囲ませんばかりに観客を自分のそぐそばまで招き呼んで演技を行う。

最近の奇術家ならスペインの鬼才ダニ・ダオルティスを連想しますね。

話を戻しますが、私自身も40年以上をかけて色々とやってきたのだけど
ロレインのフレーズ「だってクロースアップじゃないか」
これが一番しっくりと来るなと、最近になってしみじみとしているのです。

いわゆるコンテストの類は釜山のFISM以来、生で見てはいないし、
先日は久しぶりに騒がしいスナックでもやってきたのだけど

50人くらいまでの舞台や15人くらいまでのミニライブ
そしてカジュアルなクロースアップが一番楽しい

結局のところ
そもそも、人ごみやガヤガヤは苦手なのですよ

まあ、プロにはそもそも向いていないわね…
仕事でなければありえない状況もたっぷりと経験してきたので

それで得られた技術はそれなりにあるのだけど
なるべく無理はしないようにしてきたからこそ
自分なりのスタイルが出来たように感じる

今後はもっともっと好きな部分を出してゆくつもり

  • URLをコピーしました!

コメント

コメントする

CAPTCHA


目次