スキマの埋め方

先日スキマのことを話題にした際に “ここが弱くなってしまう方が多いですよね” といった書き方をしました。

私がマジックについて考える場合、そのトリックがどれほどマニアックなテーマであったとしても、一般の観客が見たときに、その現象を違和感なく (無駄な動きやセリフなどにストレスを感じず) 理解し、不思議を感じ、それなりに楽しめるのか?

そうでない場合、どうしたらその問題を解消できるのか?

実践で生かすためにはどうしたらいいのか?

常にそういったことを前提にするようにしています。

同レベルの仲間内だけにしか通用しない、楽屋落ち的ギャグや、それに属するトリックも決して嫌いではありませんが、そういったものは間違いなく例外といっていいはず。

※さらにいえば、私の場合、あきらかにそういったテーマの作品さえ、「一般客に見せるためには?」 といった考えが頭をよぎります。

技法に関してよく見聞するのは 「マジシャンがみたらわかってしまうので」 といった言い方であり、大抵はそのあとに 「それでこのようにしてみました」 と続きます。

無論、本当に改良されていれば、そのきっかけがどういったものであろうと一向に構わないのですが、私の経験上、そういった目的で考え出されたものに、それほど優れたものはなかったような気がします。

かえって一般客にはおかしな動作に見えてしまったり、さらには (まっとうな) 奇術家が見てもかえって怪しかったり。

相手がどんなタイプの観客であっても、「よくはわからないけどなんかやってるよね?」 そういわれたらマジックとしてはかなりまずいのです。

厳しい言い方をすると、「マジシャンには…」 などといっている人の多くは、一般の観客から見ても、決して自然なもの (動きやしゃべり) に見えているわけではない場合が多いものです。

その場の観客のタイプに合わせて、臨機応変にやり方を変えるなど、世界でも一握りのマジシャンにしかできることではありません。

これは気持ちの問題なのでしょうが、初心者であれ、ベテラン (のつもり) であれ、まずは “一般の観客を完全に騙すための技法やその使い方” を、そして “すべての動作やセリフまでを、トータルに構成した演技” を、考えるべきなのだと思います。

当たり前のことですが、技法や、原理といったものだけでは、決してマジックは成り立ちません。

上記のように構成され、実際に演技されてこそ “マジック” なのです。

経験上、そのような考え方を推し進め、ある程度演技としても成立すると、一般客だけではなく、レベルの高いマジシャンでも楽しめたり (引っかかったり) するものです。

手元のアップのみで成立する、動画のようなトリックも確かに存在するでしょう。

そういったトリック自体の魅力も、十分に認めた上での結論ですが (キライじゃあないんです。もちろん上質のものにかぎりますけど)、それはあくまでも “トリック” にしかすぎず、“マジック” ではないと思います。

ライブでのマジックを表現し、楽しみたいという方は、ぜひ御一考を。 

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