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先日若い知人 (考えたら私とは一回りくらい違う……ということにあらためて気がついてショック!) と、あるカードトリックに関して話をする機会がありました。

実はそのすぐ後に、今度はあまり “若くない知人” と、同じトリックについて意見を交換する機会があったので、ここで少し自分の考えをまとめておきたいと思います。

上記の二件では、扱ったトリックこそ同じものなのですが、具体的に掘り下げたテーマ自体は異なっており、後者に関してはそのうち別の形にして発表する予定なので、ここでは前者の件について記録しておきましょう。

日本では加藤英夫さんの紹介で多くの愛好家に知られることになった、ラリー・ジェニングスの名作 『ヴィジター』 についてです。

二枚のカードの間にセレクトカードが出現する、いわゆるサンドイッチ・イフェクトに、 “衝撃的な” クライマックスを付け加えた作品であり、効果の大きさと、その方法論および難易度、特別な準備のいらない点、角度の強さ等、後世に残る傑作トリックのひとつであることは間違いありません。

※日本語では 『ラリー・ジェニングスのカードマジック入門』 (テンヨー刊)か、 『カードマジック入門事典』 (東京堂出版刊)にて、解説を読めます。

この作品は考案者のジェニングス自身を含めて、実に多くのバリエーションを生み出しましたが、観客に与える効果を損ねずに、よりやさしく出来るよう 『改良』 された例を一つだけあげるとすれば、フランク・ガルシアの 『トラベリング・ヴィジター』 が忘れられません。 計算なのか、たまたまなのかは分かりませんが、どちらにしても、普通考えつかないような大胆な省略をすることで、原案とほぼ変わらない効果を達成しています。

※最近DVD化された (しかも安い!) 『スターズ・オブ・マジック』 シリーズの中で演技が観られるはずです、たぶん。

おそらくこのトリックのプロットを初めて観る観客には、まったく区別がつかないことでしょう。 原案の弱点であるパケットの持ち替えが少ない分、“あやしさ” も少ないため、かえってすっきり見えるくらいです。

さて、ここで “あやしさ” という言葉が出てきましたが、ここで言うあやしさとは、 《効果を達成するために必要不可欠であるにもかかわらず、観客から見た際にまったく意味のないように見える動作》 のことです。 ただし、単純に文字の上だけのプロブレムとして考えてしまうと納得できないことでも、現実にやってみると、セリフやタイミング、あるいはミスディレクションをうまく活用することでカバーできることもあり、必ずしもここにすべての完璧性を求める必要はありません。

無論そういったあやしさは少ない方が良いのですが、そこにばかり気を取られていると、弱点をカバーするための他のアプローチの方法にたどりつかない可能性もあり、注意が必要なのです。

※当然ですが “その逆のパターン” もまたマズイわけで、正直なところここ数年の “ブームらしきもの” で増えているのは、かえってこちらの方かもしれませんが……。 まあ結局はバランスの問題だということで。

ところで原案のプロットを (それなりに) 分かっている奇術家が、ガルシアの手順を文章で読んだ場合、その改良点を見逃す可能性はきっと (ものすごく) 高いことでしょう。

要するに現実世界におけるマジックでは、実際に (何度も) 観客の前でやってみないことには分からないことが圧倒的に多いのです。

さて、実はここまでが前フリです。 実際に若い知人と話したのはここから先の部分なのです。 と、言う訳でこの先は次回へ。

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