新潮社が毎月出している 『波』 という冊子があり、今回の新書の宣伝をかねてちょっとしたコラムを書かせていただいたのだが、そこで触れたのは例の貨幣変造事件に端を発する 『メディアのデリカシーのなさ』 であった。
フォーサイトの庄司氏と私とで、ずいぶんと長く行っている 『ともの会EX』 という会があるのだが、これは普通の講習会とは違い、参加者に演技をしてもらったうえで、ゆうき、もしくは庄司の方から (なにかしら) アドバイスできればという会である。
まずは当たり前のことであるが、我々のアドバイスを必要としていない人は、演技しないでほしい。もちろん良い観客役として参加されるのは大歓迎である。正直なところ我々は (ある意味) ボランティアであり、いちいち他人の演技にコメントなどしたくはない。演技される方はこちらを信頼してほしいし、自分なりの目標を持ち、なるべく具体的な情報 (どの点を見てほしいのか) を提示してほしいのである。
会を宣伝してくれることはありがたいのだが、この肝心な部分を理解したうえで来てもらわないことには、まったく意味がないのである。意味がないのならまだしも、結局はお互い気分を害することになる。当会に誰かを誘い、演技してもらう際は、是非気を使っていただきたい。
さて、『デリカシー』 である。大抵のことはガマンし、黙認してきたのだが、さすがに目に余ったので、先日の会の中で、初めて 『勘弁してください』 といった内容のコメントをさせていただいた。
最近のブームの影響なのであろう。テレビで見たマジックのコピーを見せてくれる方が増えているのだが、商品となっているものはともかくとして、決してそうではない、いわゆる営業手順や、商品としては発表していない作品を堂々と、しかも間違ったやり方、つたない方法で演じられると困ってしまうのである。
その作品が非常にマイナーなもので、気がつかないものであるならばまだしも、友人の作品であったり、ましてや自分自身のものであったりして、さらにはそれを充分に知った上での行動であったりするので始末が悪いのである。
まあ根本的には 「美空ひばりや五木ひろしの前で当人の歌をうたいますか?」 ってなことであり、単純に私なんかは恥ずかしいと思うのだが、どうもそーいった感情の欠落している人はいるようである。無論、自分がひばりさんやひろしさんと同格だといっているわけではありませんので念のため。
私自身は多数のレクチャー教材やノートを出しているので、その中の作品を演じたりアドバイスを求められる分にはまったく問題はない。なかには私の演じる作品が、全てどこかに解説されているものと勘違いしている方もおられるようだが、それは勘違いであるし、私が解説をしていないとすれば、その作品を演じている当人が、私のパフォーマンスからコピーしていることはあきらかなのである。
ものすごく極端な話、私よりうまかったら、感心もできるであろう。しかし残念ながらそうでもない。会の後で何人かが謝りに来たのだが、実際にはどこまでこちらの意図が通じているのかは分からない。中には本当にこちらが気にしていないレベルのことで謝ってきた人もいるかもしれない。※正直ここら辺の感覚は何度か話をしていれば分かるものです。
実際の話、あんな場所で謝られても困るのである。見かねた庄司さんが言っていた。
「あのね、松田聖子がのど自慢の審査員だとするでしょ。自分の前で自分の持ち歌を、ものすごく音程はずすは、歌詞は間違えるは、自信満々だわ……これ、困るでしょ。それがさらにディナーショーだったら?ましてやプライベートだったら?」 微妙な例ですが、多分に重なる部分もあるかと。
この間の事件では、あらためてメディアのデリカシーのなさを実感したわけですが、残念ながら現状では、マジックに関わる人の、さらにいえばマジシャン自身のデリカシーの方が問われるかと。
……ところでレオンと亀田よかったですね!
《追加》 しかしこの会に参加しただけで弟子ですとか、門下生ですっていえる人もスゴイんですが、さんざん悪い印象をあたえておきながら、こちらが黙認していると何かとイチャモンつける人、いるんですよね(^_^;)。だから上記の会の参加は自由だっつーの! 以前、マジックを依頼された上に勝手に断られて驚いたことがありましたが、この会、間違いなく誰もお願いはしていないのです。無論発表会もしかりです。こちらが依頼しているのはゲストのみ、それだって要は発表者のためでしょう?残念ですが、人間である以上、品行方正な人に対する態度とあきらかな問題児(人)に対する態度じゃあ、変化しても仕方ないでしょう?こちらにとっちゃあ、仕事でも趣味でもないのにね。こちらはもうこれ以上寛大な態度はとれません。ちなみにもしサラリーマンだったら、どういう形であれ、原因を作った責任を取らされるところなんでしょうけど……ホント、いろんな意味で不思議。そしてこの話もおしまい。
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