魔法の届く距離

タイトルに使わせてもらった言葉は、以前(5,6年前くらい)テンヨーの鈴木徹さんがおっしゃっていたフレーズで、聞いた当時 「なるほど、いい表現だな」 と感じたものです。

方法論はこの際無視して考えますが、すぐ傍で鑑賞することが可能なトリックがあった場合、その距離が離れれば離れるほど、「魔法感」 とでもいったものは当たり前に薄れます。

例えばカパーフィールドの 「フライング」 は、最前列でも鑑賞することは可能ですし、氏のパワーを持ってすれば、おそらく1000人のホールでも最後列まで 「魔法」 を届けることは可能だろうと思います。

しかし、実際に確認してみましたが、5000人のホールにおいては、世界最高のマジシャンをもってしても、それが(やはり)不可能であることをハッキリと確認することができました。

私はプロレスや格闘技が好きなので、東京ドームでの試合(3~5万人は入ります)も何度か観にいっているのですが、正直実際に見ているのはモニターであり、あくまでも 「この、同じ空間で、一応リアルタイムで観戦している」 という、いわばプチ臨場感に浸っているに過ぎません。

「音」が表現のメインであるミュージシャン以外のパフォーマーは、この部分におけるキャパシティのハンディといったものが、ものすごく大きいわけです。

無論その代わりの利点も多々ありますが、論点がずれるので、今回は触れません。

mMLでのカズさんとの対談でも話したのですが、本当のクロースアップ・マジックというのは、例えば家族団欒の席や、飲食店でお茶等を飲んでいる際の、せいぜい4,5人、距離にして1メートル以内で起こる 「不思議」 であるわけで、ショーなどにおいて、観客が5人以上いる場合は、我々の (少なくともカズさんや私の) 認識としては、いわゆる 「サロンマジック」 なのです。

少なくともプロであるならば、観客の人数が5人をこえた段階で、本当のクロースアップ・マジックはセレクトしません。使用する道具立てが一見同じように見えたとしても、そのような人数に対応できるやり方や、見せ方にシフトしているはずなのです。

で、なにを言いたいのかと申しますと、クロースアップの道具立てのまま、大勢の観客 (最後尾まで) に魔法を届けるのは (当たり前に) 難しいわけで、一流の演者を起用して、会場をかなり工夫したとしても、ライブの場合は100人が限界でしょう。

そのような意味において、マイクもモニターも使用せず、上記の条件で観客を魅了する、ファン・タマリッツや、リッキー・ジェイといった人物は、選ばれし特別な人なのだろうと思います。彼らは 「本物のクロースアップ・マジック」 を演じきることができると同時に、ほぼ変わらない道具だてやコンセプトで、一度に(生で)100名の観客を(1時間近く)沸かせるのです。

このようなスタイルを目指すのは自由ですが、最初から観客の人数がわかっているのであれば、あらかじめ遠目のきく演目をセレクトしたほうが得策でしょう。

近年は国内でも、驚くほど多くの 「クロースアップのコンテスト」 が行われているのですが、注意してほしいのは、 「クロースアップ」 というのはほんの建前で、実際には、サロン、ステージ、といった感覚のものになっているという点です。

早い話、コンテストで本当にクロースアップを演じると、ほぼ入賞はできないということです(だってカードもコインも、普通に扱ったら見えないんだもの!)。したがって、もしコンテストで入賞することが目的なのだとすれば、遠目のきく、サロン、ステージ、といった感覚の手順を構成することが前提となるでしょう。

えーっと、話がそれてるようなので戻しますが、要は普通にクロースアップを演じようとした場合、魔法の届く距離は、かなり限定されます。物凄く良い雰囲気で、テーブルの上がどこからでも眺められる(らしい)有名なロスのマジック・キャッスルでも、客席は22席(たしか)と聞いています。

ごく普通のスペースを借りて、「クロースアップ・マジック」 を一般の方に楽しんでもらおうと考えれば、それ以上の席を設けることは、単なる無謀以外のなにものでもないと言えるでしょう。

テーブルや席の配置を考えても、本来ならばせいぜい10名くらいにしたいものですが、現実にそれが不可能な場合は、結局のところ、演技時間を短めにするしかないんじゃないかと思います。

さて、つい、だらだらと長くなってすみませんでしたが、このような経験を踏まえて(無論現在も試行錯誤の段階ではありますが) 「第二回モダクラ劇場」 が、7月17日の海の日に開催されます。

ゆうきと、庄司タカヒトに加え、女性マジシャンのまゆさん、コメディパフォーマーの石黒サンペイ師匠(ホントにおもしろいです)をお迎えしまして、約1時間のショーとなっております。 一応クロースアップ・マジックショーということで、上記の点に配慮いたしまして、1テーブル20名限定で、完全予約制となっています。

1部 OPEN 14:00 ~  START 14:30~

2部 OPEN 17:00 ~  START 17:30~

五反田ゆうぽうと5階  はまゆうの間、さわらびの間

お申し込みは、フォーサイト・武井まで 090-9372-6151

ご予約の際に人数と希望時間、お名前をお知らせください。

と、いうわけで当日会場にてお待ちしております。はっきりいって宣伝でした!


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