泡坂氏の小説の中で書かれているように、カップの数が三つあることや、さらには見た目のボールの数が三つあることで、奇術師の起こせる奇現象の数は飛躍的に増えることになります。
例えば「悟空の玉」がバランスとして優れているのは、三個のカップと三個の玉を使っているからであり、二個のカップと一つの玉、では現象的にもさびしいでしょうし、使用している原理が悟られる可能性も高くなりそうです。
細かく考察して行くとキリがないので、結論だけを簡単に申し上げますと、使用するカップやボールの数が少ないほど、そして演技時間が長くなればなるほど、マジシャンの技術的、演技的負担は大きくなります。(>_<)
チョップカップに代表されるシングルカップの手順は、一見楽そうではありますが、それはたいていの場合一分とかからない短い手順だからであり、また、すぐにビッグ・クライマックスが訪れるため、「ビックリ箱マジック」としてはよろしいのですが、その作品単体で演者を印象付けることは難しいのです。
チョップカップの見事な演技者としては、ドン・アラン氏やポール・ダニエル氏がいますが、その個性的な演技スタイルはともかく、あそこまで観客を引き付けるのは並みの奇術家には無理でしょう。
私を含めた「並みの奇術家」のみなさんは、まずは三つのカップと三つのボールを使用した、現象に適度な変化のある、せいぜい三分間程度の手順をしっかりと学び、実際に演じながら学習していくべきだろうと思います。
ところで日本の奇術家にヴァーノンの手順を演じる方が多い理由は、「奇術研究」でお馴染み(現在は東京堂出版にて、復刻版が手に入ります)の、力書房の影響がおそらく大きいのでしょう。もしかすると、日本語のしっかりした解説書としては、最初で最後の小冊子であったのかもしれません。
また、現在では専用のカップもかなり安く手に入れることができますが、力書房なきあとは、 「テンヨー」 もしくは 「トリックス」 のカップくらいしか手に入らなかった時代が長く続きました。そして、前者にはヴァーノンの手順(簡易版)が、後者にはマルローの手順(余分なボールを使用しないもの)が解説されておりましたが、やはり観客よりの見た目の完成度および、難易度という意味においては、前者に軍配が上がるといってよいでしょう。
mMLでは、12号にてカズ氏のライブを楽しんでもらい、専用のカップについても考察します。そして14号以降となりますが、以前解説した紙コップを使った手順につなげて演じられるものを解説する予定です。
そして、以前に少しだけ触れた個人レッスンに関しましては、ご本人の許可を得られましたので、そこにヴァーノンの手順をご存じない方のための(私による)解説を加えまして、七月くらいには発売できる予定です。
さらにはそれとは別に、私自身が主に採用している手順を中心としたDVDも、いずれ制作する予定です…… というわけで後半は宣伝でした! (^^♪ つづく
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