つづき

余談が長くなりまして 「右から左へ~♪」 の話が滞っています。

すみません。

まだアル・ゴッシュマンのフェイクパスを見ていない方は今のうちにどうぞ!

とりあえず 「クライストのフォース」 についてです。

私がこのアイデアを最初に知ったのは、高木氏のほかの著作でしたが、そこでは 「カードマジック」 での解説同様、シンプルでダイレクトな即席の予言 (メイトカードを目の前で取り出しておくことで、準備なしの即席トリックとして演じられます) の形になっています。

※これは今だからいえることですが、このフォースの使い方としては、こういったダイレクトな使用方法が、トリックとしてはバランスがとれている気がします。

まだ本格的なクロースアップ・マジックを生で見ておらず、知識、技術面ともにままならなかった (ま、今でもそうですが) 中学、高校生くらいまではよく演じていました。

実際に演じてみてわかったことは、このトリックが十分に通じるということと、安全であるということくらいでしたが、当時唯一気になっていた点は、いったんめくったカードをデックとそろえなくてはならない部分でした。

そして、この部分を観客にフォーカスさせてはいけないのだということは、当時の私でも十分に理解していましたから、そこで卓上のカードに注目させ、予言であることを説明する、トップの表向きのカードを一枚ずつ示し、何枚目で止めたのか?またはカードがすべてバラバラであること等をあらためる、といったエクスキューズを行っていました。

今回この提言をしてくれた奇術家が気にしている部分については、「基本的にテーブルが使えない(よって演者の手の中だけで行う)」 といったエクスキューズで十分な感じがするのですが、その場に同席していた庄司タカヒト氏の意見にも説得力がありました。

曰く 「初心者や素人っぽい人物が行う場合なら問題ないだろう」 という訳です。

なるほど。それなら私自身の体験とも一致します。

普段親しい奇術家の間ではよく話題にすることなのですが、マジックの不思議さや説得力というのは、「演じられる作品」 以上に、「誰」、つまりどういうポジションで、どのように見える人が、どう演じるのかによって変わってきます。

※同じクラスの名人、もしくは同レベルの演者が、相手よりちょっとでも抜きん出ようとした場合であれば、「作品のセレクション」 が重要な要素であることは事実なのですが……。

少なくとも、それまで華麗にカードを操っていた人が、明確な理由がない限り、突然野暮ったい動きをしてはいけないのです。

さて、ひとつのトリックやアイデアについて、観客、そして要は自身のために、細かい改良を加えていくこと、そのために根本的な原因を考えてみることは、面倒かもしれませんし、時間のかかることかもしれません。

しかしそれ自体を楽しめるようななると、さらなる深さや難しさを実感し、よりマジックを愛せるようになります。ここでのフォースに関する2回にわたる考察は、ほんのさわりにすぎないのです。ここから先は是非みなさん自身で考えてみてください。

というわけで次回はフェイクパスの話に戻りましょう。 たぶん。

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