先日紹介したサム・ライミ監督の映画 『スペル』 について、レオン氏がブログで酷評していておもしろかった。
次回会ったら感想を聞こうかと思っていたのですが、基本的には予想通りでした。(^_^.)
私自身、あまりにも あからさまな オチには首をひねりましましたから…
でも… たぶんライミ監督はあの感じ (80年代のテキトーB級ホラー) が大好きなんだろうなと。
別に今回の 『スペル』 に限ったことではないのですが、思わせぶりで、あきらかに間違った前提の宣伝がヒドイのは確かです。
正当なサスペンスや恐怖、ヒッチコックやロメロのような作風を求めるような一般の?方には “絶対に” おススメしません。
でも私は結構好き。
大抵のショー (映画でも小説でもマジックでもなんでも) は観客に最初に伝えるべき前提を誤ると、正当な評価を受けることができなくなります。
その昔、まだ 「ミステリー」 という言葉の定義が今ほど広くなくて、イコール 「推理小説」 だと思っていたころに、綾辻行人氏の 『殺人鬼』 を読みました。
作品中あまりにも不可能な設定があり、「これをどうやって解決するのだろう」 と思いながら最後までドキドキしながら読み進めていったら…
なんと!これは (いわゆる) 推理小説ではなく、超自然を扱ったホラー作品だと知って、愕然としました。
つまり、私が知りたかった (求めていた) 答えは最後までなかったのです。
念のためいっておきますが、私自身はガチの本格推理しか読まないわけではなく、SFもホラーも好きなのです。
あくまでも当時の綾辻氏のイメージと、『殺人鬼』 が出版されたときの宣伝に (悪い意味で) ミスリードされてしまったわけです。
※ちなみに仕掛けのある (現在でいう広義のミステリに入る) ホラーとして大変な傑作だと思いますし、実際に 『殺人鬼Ⅱ』 もしっかり読みました!
もちろん、一般の方にはすすめませんが、名作です!
ファンタジーや恋愛小説だと思って読んでいたら、実はガチのミステリで、すべてが現実的に解決されてしまったりだとか (以前 泡坂さんの小説にあった、そういった一例をコラムで取り上げたことがあります。小学館文庫の 『クロースアップマジック23』)、ミステリだと信じ切っていたらSFだったとか…
そりゃあ、ガッカリしますよね。
これ、マジックを演じる時もいっしょです。
で、上記の例は基本的にプロデューサーの仕事なのですが、パフォーマーとしては、まず、自身がそのトリックの効果のほどを、なるべく正確に理解しておかないといけません。
トリック自体には大抵 “罪” はなく、だれが、どこで、どのように、だれにたいして演じるのか、かつ “どのていどの” 不思議やおもしろさを演じたいのか?
コイツが重要なわけです。
多くのマジック愛好家 (?) の傾向として、セルフワーキングや数理トリックの類を敬遠する人が多いのですが、「うけない」 とか、「ばれた」 とか、「反応が悪い」 といった感想は、
そもそも “どのていどの効果を” 観客に与えようとしているのか?
そこんところを理解していない方が多いのかなと。
誤解を招きそうで怖いのですが、トリック自体のジャンルには関係なく、80点のものもあれば、MAXが10点や20点のトリックもあるわけです。
すべてがメインディッシュのショーなんて、結構つらいでしょ (^_^;)
私は各々のトリックの7割以上の点数を取ることを目標としています。
MAXの点数が低いものであれば8~9割が目標です。
数理トリックでも、ギミックでも、テクニカルで、巧妙で、壮大な手順を演じようと思っても、それらを それなりに 演じられるようになるには それなりの 時間が必要なわけで…
反応が悪いのは決してトリックのせいではないはず…
極論ですけど、
すべったっていいじゃん!
って、ゆうか、トッププロだってすべることは多々あります。
しかし、観客に失礼なことをしたり、 独りよがりの演技をえんえん見せ続けて、いやな思いをさせたりするよりは、よっぽどましというものです。
逆に、最近よく 『鉄板ネタ』 という言葉を聞きますが、そんなネタを選択している割には、実際に見るとそれほど受けていない… ってな状況も結構見聞します。(^_^.)
まあ、 うける という言葉の定義自体は人それぞれなのかもしれませんが…
マンスリーマジックレッスンをはじめとして、私の講義ではいつも言っていることなのですが、少なくとも人前でそれなりの演技をしようと思っているのであれば、最初の10年くらいは選り好みせずに、一通りのジャンルを試してみるべきだと思います。
たとえそれがどのようなトリックだとしても、数えられるほどの実演回数 (しかもやりっぱなしが多い) では、何も分からないのが当たり前なのです。
プロでもアマでも、トップの人が初演のトリックでもそれなりに演じられるのは、そういったあらゆるトリック実演の経験を積み重ねてきたからにほかなりません。
それでも すべる ことはあるのです。(^_^.)
この部分に関して、近道は決してないことを知っておいた方がよいでしょう。
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